セキュリティ・キャンプとは
「セキュリティ・キャンプ全国大会2021オンライン」は、情報セキュリティ技術のエキスパートを養成するための勉強会です。本大会で IoT セキュリティトラックの IoT ものづくりゼミ (X-II) の講師を担当しました。
セキュリティとは、いわゆる暗号やコンピューターに限らず、様々なフィールドを広く横断的に見る特殊な分野です。少なくとも情報セキュリティと対峙するためには、コンピューターを構成する電気回路(最も低いレイヤー)から Web にまつわる技術(最も高いレイヤー)までを見通し手を動かす能力が必要です。
講義内容
学生諸君に上記のような視点を得てもらうために、私の講義では「電気から Web まですべてを少しずつ触り1つの完成されたシステムを作り上げる」という体験を提供することにしました。文字通りすべてが触れられることはもちろん、楽しく学んでもらうために、内容がキャッチーであることも要件として挙がりました。
そこで上記の要件をみたすテーマとして、過去に私が趣味としてブログで公開し好評を博した「走るルーター」を採用しました。非言語的に取り組んでいた工作の部分を完全な手順にする必要があるため講義資料の作成は困難でしたが、幸いにも学生が難なく進められるレベルの講義資料および手順とすることに成功しました。
完成した講義資料では、以下のように進めていきました:
- 工作して車体を作る
- 回路開発
- 手元の PC を開発用にセットアップ
- ネットワークの学習
- OpenWrt(ネットワークルーター向け Linux ディストリビューション)の解説
- マイコン開発
- REST API 開発
- フロントエンド開発
- 結合
これらの手順をすべて終えると、小型の無線ルーターが PC やスマホから操作できる履帯付きラジコンになります。今回使用したルーター GL.iNet GL-MT300N-V2 は OpenWrt ベースのファームウェアを搭載しながら技術基準適合証明を得ているため、法的な問題なく追加ソフトウェアや自作のコードを動かすことができ、本当に無線のラジコンにすることができます。
実施した結果
実際の講義では初めての講師というのもあり問題も様々発生しましたが、学生諸君の優秀さもあり全員講義目標を達成させることに成功しました。少し難しくしたつもりでしたが、思ったより難易度感もマッチしていたようでした。